2022年4月から中小企業にも義務化されたパワハラ防止法について解説
2022年4月から中小企業もパワハラ防止法の適用対象となりました。
このページでは、パワハラ防止法についてご説明します。
◆パワーハラスメントとは
パワハラ防止法は、文字通りパワハラの防止を目的とする法律です。
では、そもそも「パワハラ」とは何でしょうか。
パワハラとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものをいいます。
パワハラにあたるかどうかは、言動の目的・経緯・態様・頻度・継続性、業務内容、労働者の属性・精神状態・受ける苦痛の程度、両者の関係等の事情を考慮して判断されます。
各要件の具体的な内容、パワハラに該当する行為の例は、「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」(厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室))に掲載されているため、ご参照ください。
身体的・精神的攻撃のほか、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、私的領域に対する過度な立ち入りなども、パワハラに該当しえます。
◆事業主の責務
パワハラ防止法は、事業主の責務として、以下の3点を明確化しています。
・ハラスメント問題に対する労働者の理解と関心を深めるための活動
・雇用する労働者が言動に注意を払うように、事業主が必要な配慮を行うこと
・事業主自身がハラスメント問題に対する理解と関心を深め、労働者に対する言動に配慮をすること
◆労働者の責務
パワハラ防止法は、労働者の責務として、以下の2点を明確化しています。
・ハラスメント問題に対する理解と関心を深め、他の労働者に対する言動に配慮すること
・事業主が講ずる雇用管理上の措置に協力すること
◆事業主が講じなければならない措置
パワハラ防止法は、事業主が必ず講じなければならない措置として、以下の4項目を明示しました。
・事業主がパワハラ問題に対する方針等を明確化し、これを労働者に対して周知・啓発すること
行為者について厳正に対処する旨の方針・対処の内容を定め、これを就業規則等によって、労働者に明示することを含みます。
・労働者からのパワハラに関する相談に応じ、適切に対応することができる体制の整備
担当窓口をあらかじめ設立し、適切に対応できるように整備しておくこと、また、これらのことを労働者に周知することが要求されています。
・発生したパワハラ問題に対する迅速かつ適切な対応
迅速・正確な事実の確認
被害者配慮のための措置と、行為者に対する措置を講じること
再発防止措置を講じること
以上のことが、パワハラ防止を徹底するための対応にあたります。
・その他講ずべき措置
そのほかに、上記に併せて講ずべき措置として、以下のものがあります。
関係者のプライバシーを保護するために必要な制度の整備と、労働者に対する周知
ハラスメント相談窓口に相談したこと等を理由とする、解雇等の不利益取り扱いの禁止と、労働者に対する周知・啓発
これらを行うことによって、パワハラ防止のための制度を活用することに対する萎縮効果を防止します。
◆罰則について
上記事業主が講ずるべき措置を講じないなど、同法に違反した場合に罰則があるのでしょうか。
この点、パワハラ防止法は、罰則規定を設けていません。しかし、同法違反があると、厚生労働省からの指導・勧告を受ける可能性があります。そして、指導・勧告に対して適切な措置を採らなければ、社名と、同法違反の事実が公表されるおそれがあります。会社の社会的評価や、将来の人材の確保のために、迅速かつ適切な対応が求められます。
坂・畠山法律事務所は、企業法務を中心として、民事商事をはじめとする法律問題全般を取扱分野としております。
お客さまの満足のため、誠実・適切・迅速な法的サービスの提供を心掛け、幅広いネットワークを活用し、お客さまのニーズにお答えしていきます。
パワハラ防止法に関連して、また、そのほか広く法律問題にお困りの方はお気軽にご相談ください。